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染め草たより
<春>

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つくし                     

三月、あたたかい雨が野山に降りそそぎます。 草や木も、芽吹きの準備をはじめます。
高い山では、雪がとけて沢にそそぎ、やがて川となって、都会にも水をとどけます。
低い山でも、降った雨が地面にしみこみ、それがどこからともなくにじみでて、木の根、石のあいだをくぐりぬけて、山裾の田圃をうるおします。

 去年の秋、稲を刈ったまま、冬を越した田圃は、今年はどうするのだか・・・まだそのままで、休耕田の多くなったこのごろ、なんとなく気になります。 昔は(なにかというと、つい"昔"が出てしまいますが……)一面のれんげ畑がきれいだったのに……と、畦道に腰をおろして驚きました。 れんげどころか、見渡す限りのツクシ、つくし、土筆。
こんなに沢山のつくし、はじめて見ました。

 つくしは染まるかどうか、わかりませんが、ともかくも摘むことにしました。 去年の枯草や、ワラが重なり合っている間から、ツンツンと出ています。 
摘んだうちの半分は
例によって、春の恵みとして、賞味させていただきます。 ていねいにハカマをとって、 さっと湯がいて、少しおかかをのせ、お醤油をたらしてまず一献、となりますと、これはもう、春宵一刻値千金。 つくしは、なんのために摘んできたのでしょう。

 染める時は、はかまごと。染め方はいつもと同じ、でも、木綿にはとても色がつきそうにないので、比較的、植物の色がつきやすいウールの糸をそめます。
 薄い、やわらかな、みどり系の色になったので、大よろこびです。

ところが次の年、また、同じ所のつくしを採ってそめたら、茶系の色になってしまいました。 記録してある採取日、染めた日を確かめてみたら、去年と同じ日でした。


どうも納得できなくて、いろいろな人に聞いてみました。 もしかして、胞子が飛んでしまったんじゃないの?  と言った人がいました。 そうだったのです。 ことしは、暖かくて、つくしも、他の植物も育ちが早かったのです。 こういう事は、よくあります。

"季節を染める"という言葉を使うのは、こんなわけなのです。

 相手が植物なので、しかたがないのですが、場合によってはあわてます。 去年のあのきれいなみどり色は、つくしの胞子のコナコナの色だったのですね。 こんどから、つくしを染める時は、胞子を飛ばさないように、大事にもってかえろうと思います。 でも、今度摘みに行ったとき、あの田圃に、あんなに沢山のつくしが、前と同じように生えているでしょうか。

(1999・4・4)

     
       
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