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16.富士山
昭和46年頃の冬

17.山辺三山
最終回

 

 

   

朝倉通信 4  三栗谷用水

 三栗谷用水は、渡良瀬川からとりいれて、御厨田圃をうるおし、ふたたび渡良瀬川にはいります。このあたりも、ずいぶんかわりましたけれど、三栗谷用水はかわりません。用水沿いの道は舗装され、あたりに家がふえ、11階建てのマンションまで建ちましたけれど、用水の流れは昔のままです。田植え時には、あふれるほどの水がとうとうと流れ、稲の色が増すにつれて、だんだん水が少なくなり、稲刈りがすみ、椋鳥や、ヒヨドリが里にもどってくるころ、川の底がみえるくらいになります。

 白鷺が、どじょうを捕りにやって来るのもこのころです。あっちをむいて、知らん顔をしながら、脚をうごかして上手にどじょうをさがします。なかなかうまいものです。

 古い土管を住みかにしている背黒鶺鴒は、長い尾を振りふり用水のへりをあるきます。たまに、かわせみもみかけます。かわいい雛を5,6羽つれて、カルガモが泳いでいたこともあります。

 ザーザーのところはあいかわらず、ゴミのうずができています。池森のところから、もとの早川農園までは用水にふたをして、道路になってしまいましたが、アキレスからこのへんまではもとのままです。

 南小が建つまえは一面の田圃でした。雨が降ると、湖のようになってしまいました。冬になると用水の道からはるか遠くのほうに、富士山がみえました。

足利では、少し高いところにのぼれば、どこからでも見えます。晴れた日には新宿副都心のビル群もよく見えます。

 まわり中田圃だったこのあたりは、初夏、蛙の合唱がうるさいほどでしたが、いまは、ひとこえも聞こえなくなりました。毎年、夏になると、家の庭にかならずやって来て、一日中、不動の姿勢でつぐんでいた大きな蟇蛙も、いつのまにか、来なくなりました。蜥蜴も、親子代々住みついていたのに、これは、ニャンチュウがかまうものだから、みんな、しっぽがなくなってしまいました。

 お店もなくて、不便だったけれど、草も木も、鳥も虫も、空気も水も、自然は豊かでした。  

1999・2・13

     
   
 
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