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昭和46年頃の冬

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最終回

 

 

   

朝倉通信 6   大日さま

          
 桜吹雪が、舞散ります。どこもピンクの雪です。
コンクリートばかりの町のなかには、花を見ることもできませんが、一歩横にそれると、満開の桜は、どこにでもあります。 この頃は観光客でにぎわう ばんな寺の桜も、今が盛りでしょう。

 今は、誰もが ばんな寺といいますが、むかしは、大日さま、と呼ぶのがふつうでした。
御本尊に、大日如来をおまつりしてあるからです。山門には、左右に仁王様が悪者をおどすように立っていらっしゃいます。柵には、ワラジが沢山さがっていて、どういうわけか、身体じゅうに紙つぶてが、はりついていました。一万坪ほどの境内のまわりを、ぐるりとお堀がとりまいていて、鯉や亀が沢山います。誰かがなげる、えさの麩をねらって、何十匹もが、水飛沫をあげていっせいにとびあがるようすは、迫力万点です。


 そのお堀に太鼓橋がかかっています。まんなかほど、高くなっていて、案内の地図などをみると、反橋(そりはし)と書いてありますが、みんな、ドンドン橋といっていました。
屋根もついていて、傷んだところに板などあてて補修していましたが、このごろ、すっかりきれいになおりました。

 山門をはいると、以前は右側に茶店が二、三軒あって、鳩のまめや、鯉の麩や、おでん、おだんご、おもちゃなど売っていました。でも、すこし先に、国宝の鐘楼があって、万一、火をだしてはいけない、ということで、西門のほうにうつりました。 本堂の左手に、大きな銀杏の樹があります。秋には、いっぱい実をつけるので、ぎんなん拾いを楽しみにしている近所の人もたくさんいます。
この、銀杏の樹のまわりを、息をつかないで三回まわると、上から白い蛇がおちてくる、という噂があって、ほんとかな、と息をつめて三回はしりましたが、もし白い蛇がおちてきたらどうしよう、と急にこわくなって、そのまま家まで走って帰ってしまいました。
 いまでは、樹のまわりに、ぐるりと石の柵ができていて、とても息をしないで三回はまわれません。


 その頃は、戦争がおわって、町も、人もやっと落ち着いてきたものの、子供達には、遊び場もなにもありませんでした。そこで、大日さまのお堀を、プールにすればいいのにね、などとみんなでいいあいましたが、そんなことしなくて、よかったですよね。
 大日様は、足利のひとたちの、大切なオアシスです。

1999・4・9

     
   
 
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